2008年07月20日

カボスの気持ち

俺、猫。
名前は最近カボスって呼ばれている。
何でカボスかって言うのは
名付け親のヨーコさんに聞かないとわからないが
多分、「かっこいいボス」とか、
「かわいいボス」を略したんだろうなと、勝手に思ってる。
ヨーコさんと別れた今、それを確かめる術は無いけど。


俺、基本的に人間は信用していない。
なんでかって、簡単だよ。俺は一度完璧に捨てられたからさ。
捨てられる前は、東京の何とか(猫にはわからん)って街で
親兄弟と前の飼い主と仲良く生活していたんだ。
兄弟は全部で7匹。俺はその中で長男になる。
さすがにこれだけ兄弟が多いと飼い主も大変だったんだな。
俺たちは養子に出される事になった。
体の小さい、弟や妹から順に貰われていき、
しばらく経った日に俺のすぐ下の妹が貰われていった時、
「次は俺の番だなぁ。新しい家でも頑張ろう。」
と思ったのさ。


ところが、ちょっと飼い主の様子がおかしかったって言うのは
後からは分かるけど、その時は気付けなかったんだ。


夜、もう暗くなってから車で
家から離れた小さな公園に連れていかれたんだ。
「ここで新しい飼い主と対面なのかな?」って思った。
でもそんな人物は現れず
元の飼い主もいつの間にか帰ってしまった。
「おいおい、こんなトコに置いてけぼりかよ!」
そう、体のでかくなった俺だけ結局里親を見つけられず
飼い主が選んだ結論は“捨てる”そういう事だったんだ。
参ったね。もう人間なんて信用できねーよ。
ちくしょー、腹が立つのに腹が減ってどうしようもねー。


といっても、もともと俺は飼い猫。
野良と違って自分で食事の餌を捕ることがイマイチ出来ない。
頑張ってもネズミどころか虫一匹捕まえられない。
話の分かる野良がいたら、頼み込んで弟子にさせてもらうのに
どうやらこの辺にはそんな猫はいないのか、姿が見えない。
逆に飼い犬には吠えられまくって
いったい俺はどうすりゃいいんだ。
缶詰のキャットフードはもう一生食べられないのか?
いや、それより俺、このまま死ぬのか???


やっぱり死にたくないからさ、俺、プライド捨てて
道をたまに通り過ぎて行く人間に擦り寄って行ったんだよ。
自力で簡単に里親が見つけられるなんて思ってなかったけど
何か食べ物にはありつけるかもしれないって期待があったからさ。
でもまるでダメ。
いい反応でも頭や背中、喉をなでてくれるくらい。
悪い反応の時は蹴りを入れられた。サイテーだ。
そんな扱いで俺は、牙を1本失い、鼻と片足を怪我してしまった。
もう心も体もボロボロになりかけていた。
ボロボロになると、いい反応の率はどんどん下がっていく。

弟や妹たちは、幸せに暮らしているかなぁ。。。


もう体より
心の問題で俺は動く事が出来なかったのに
ヨーコさんは傷ついて怯える俺を見つけると
迷わず捕まえて抱きしめて、なでてくれたのさ。
「あー、もう、なでるのはいいから、食べ物くれー」

びっくりした。
ヨーコさんは俺の言葉が分かったみたいで
俺を自分の住んでいるアパートまで連れて帰ると
ミルク&鰹節をご馳走してくれた。
そのあと無理やりシャワーを浴びさせられたのは敵わなかったけど
おかげでサッパリ。
九死に一生って、この事だろうなぁ。
今日は本当に疲れた。
これはもしかしたら、夢なのかもしれないなぁ。
眠るのは怖いけど、このままの気分で天国に行けるなら
もう、それでもいいや。
ヨーコさんが喉をなでてくれている。
俺はそれに応える。
ゴロゴロゴロ・・・・


次の日、目を覚ましたら、なんと、猫缶が!
俺が寝てる間にヨーコさんが買ってきてくれたんだ!
「嬉しいよ。有難う。」
「どういたしまして」って、やっぱり言葉通じてる?
で、その時にヨーコさんは俺に、新しい名前「カボス」をくれたんだ。
だから俺、この人に一生ついていくって思ったね。
「ヨーコさん、これから宜しくです!」
でもそれにはヨーコさんは応えてくれなかった。。。


ある日、ヨーコさんと俺の住むアパートに荷物が届いた。
ケージだった。
ケージったって、つまり持ち運びの出来る“檻”みたいなもんだ。
小型の犬族ならそういうのも似合うかもしれないけど
猫はどうかと思う。ちょっとヨーコさんのセンスを疑った。
「俺をここに入れて、どっか行くのにつき合わすつもり?」
ヨーコさんはまた何も応えてくれない。
「猫は飼い主には懐くけど、基本的に自由な動物だから、
そんな檻で拘束されるのは苦手なんだよ。」
またも無反応。おっかしいなぁ。


その次の日、朝早く来客があった。
ヨーコさんが慌てて俺を抱きしめてくれた。
なんか変だぞ!?
「ごめんね。ここじゃ、飼ってあげられないから・・・」
って、おいおい!
そんなヨーコさんの様子に気付いて逃げ出したかったけど
悪い予感は的中。俺はあのケージに無理やり押し込められた。
「元気でね」って、「ヨーコさん俺どうなるんだよ?」

200807190929000.jpg

来客者のオッサンは俺の入ったケージを受け取って
そのオッサンの車の助手席に乗せた。
一瞬の事で何が何だか理解出来ない。
車はすぐに走り出した。
やっぱり俺はまた捨てられたのか?
それともこのオッサンが俺の新しいご主人か?
いや違う。
このオッサンは運転中、やたら俺に話しかけていた。
ヨーコさんの言葉と違って意味はまるで分からなかったけど
どうやらどこかに俺を運ぶのがこのオッサンの役割りらしい。
くそー、こんな檻、牙さえ2本あったら破ってやるのに。
抵抗空しく、車は俺とヨーコさんの距離をどんどん引き離して行った。


あれから、オッサンは俺を飛行場に連れて行ったんだ。
“飛行場”って分からなかったけど
“飛行機”って乗り物に、ケージごと乗せられて、俺は空を飛んだんだ。
それからまた別のオッサンの車が俺を運んで
この家に俺は連れて来られた。
その間は、いろんな事を思い出していたよ。
生まれた時の事。兄弟たちの事。楽しかった事。
捨てられた事。人間に蹴られた事。悲しかった事。
短い時間だったけど、ヨーコさんと暮らした事。最高に幸せだった事。
もう、思い残す事無いって事も無かったけど
多分、俺、やっぱり死んじゃうんだろうなって覚悟しちゃったからさ。
凄い、怖かったけどさ。。。


この家の人たちは俺を「カボス君」って呼ぶ。
普通に一人前(一猫前)の猫として扱ってくれる。
でももう、人間はあんまり信用できなくなっちゃったんだよ。
ただ、なんとなく、そう、なんとなく、
この家の人たちは
俺の好きな人に感じや匂いが似てるんだ。
だから、またどこかに連れていかれるまでは
飼われてやる事にしたのさ。


「カボス君」
この家の奥さんが話しかけてくれた。
いつもはこの家族の言葉は何となくそうだろーなーくらいしか分からなかったけど
この言葉ははっきりと分かった。


「もうすぐ夏休みだから、ヨーコが彼方に会いに帰ってくるって。」



********************

追記'08/08/18
 カボス君にまた会いたくて、その後の「カボスの気持ち」を創作しました。読んでもらえたら嬉しいです。
 2つに分けてあるので、カテゴリ「創作モノです(#^.^#)」
http://nextscene.seesaa.net/category/5483946-1.html
から日付順に見てください。



キャットシッターなんりが
”猫暮らし”の極意を教えます。

posted by yoshi at 06:52| Comment(4) | TrackBack(0) | 創作モノです(#^.^#) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
突然ですが、コミュニケーションサイトを運営しております。
p-netbanking と申します。当サイトでは、
「人気ブログをランキング」を重要なテーマとし、
ブロガーの方々の、コミュニケーションの場を提供すると同時に、
どなたでも無料で参加でき、よりエンターテイメントに、
気軽に立ち寄れるサイトを目指し、日々、努力をしています。
貴ブログ様のご登録の御願いにコメント欄を
お借りしてご案内をいたしました。
是非とも、貴ブログのご登録、及び、
ランキング参加を御願いできれば幸いです。
こちらのサイトです。
http://www.p-netbanking.jp
検索バー横にブログ登録フォームがあります。
また、検索サイト・ランキングサイト等より訪問しております。
重複してご案内になりましたらお詫び申し上げます。
なお、全く興味のない方は、削除してください。
失礼いたします。
Posted by magazinn55 at 2008年07月20日 15:32
こんにちは、

飼い猫であって優しくされた記憶があるなら、酷い目にあっても人間を信じる子も居たり、様子を見たりするでしょうね。
余程酷い目にあったのなら別ですが、猫さんの気持ちは一途なものです。

良いお話に仕上がってますね。
Posted by ニャンコ at 2008年07月22日 00:51
>ニャンコ様

わ!嬉しいです。勝手にトラバして済みませんでした。
カボス君の気持ちはカボス君じゃないと分かりませんから想像で書いてますが、話の大筋はモデルになった話が実際にあります。文中の“オッサン”がつまり私で、写真のカボス君は実名、ヨーコさんは仮名で存在します。

子供の頃猫を飼ってた事があって基本猫好きなので、こんな役目はちょっと辛かったけど、きっとカボス君はこれから幸せになってくんだと思います。
Posted by yoshi at 2008年07月22日 10:31
こんにちは、

とんでもないです、トラフィックバッグありがとうございます。

動物の思いは一途で純粋です。
カボス君の信頼が得られたらきっと皆幸せになれるでしょうね。

また遊びにきて下さいね。
Posted by ニャンコ at 2008年07月24日 15:55
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
goo チームロハス証
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。